切り株まんこ | Yacchimattaze!やっちまったぜ!

切り株まんこ

私の知り合いに若い男性のカメラマンがいる。
彼とは2年くらい前に、友人のイベントで彼が展示会をやっていて、そこで知り合ったわけだけど、最初、口数の少ない物静かな感じの奴だなあ、という印象だった。
ただ、彼が展示していた作品の感じがすごい闇を感じて、声をかけたのが始まり。
ちょっと仕事をお願いしたりしたこともあったのだが、しばらく会うこともなくなっていった。

先日、たまたま秋葉原でふらふらしてたら、兄さん、と彼に声をかけられた。
おお!久しぶり!元気?と、ちょっと立ち話をして、その場は別れお互い行き先に向かった。
後日、彼から、兄さん、日本酒好きですか?俺、地元が福島なんで、日本酒送ります、と気の利いた連絡をもらい、大好きなあぶくまが送られてきた。
だったら、飲みに行こうぜ、と、飲み友達のやってる日本酒の美味い居酒屋に行くことになった。
実は、俺、あまり飲めないんです、といいながら、始まったその飲みは、ちょっと憂いのある、普段あまり表情を変えないような物静かな彼の印象を180度変える、とんでもないものになっていくとは、そのとき予想だにしていなかった。

彼は、大手の出版社のカメラマンとして、さまざまな写真を撮ってきた。
長期間、スタジオに籠もりっきりになることも少なくなく、日に当たるのが通勤時だけ、だなんてことが数年に渡ったこともあるという。

もうね、昼夜とか時間の感覚もなくなってくわけですよ。
すると、不眠症になっちゃって。
夜寝れないから、頭がおかしくなって、飛び出したくなるんです。
実は、兄さんが見た展示会の写真って、夜中自宅の近くをさまよって見つけた、古いビルの屋上から撮ったものなんです。
そもそも、モテたくてカメラマンになったんで、変態的なエロい写真が好きで。
俺が敬愛しているVOGUEのファッション写真を撮ってるカメラマンがいるんですが、彼なんてモデルにVOGUE出してやると言ってヤッた女の性器の写真を写真集とかで出してるんです。
中出しした後のとかもあって、、、もう、すげぇなあ、ぶっ飛んでるなあって。

ああ、だから、なんとなく闇を感じたのか、と私は笑いながら、酒をあおった。

何度か、そのビルに行って、写真を撮ったんですけど、基本的にそんなところ入っちゃいけないじゃないですか。
だから、気をつけて写真撮ってたんですけど、夢中になって時間分からなくなっちゃうことがあるんですよ。
真夜中に高島平のビルの上からでっかいストロボ焚いてバシバシ撮ってたら、周りに住んでる人から通報が入っちゃったみたいで。
警察が警棒もって、お前何してるんだ!!と下から怒鳴られて、、、そんときは、もう平謝りです。完全に盗撮マニアの変質者だと思われてますからね。

でも、まあ、良い写真撮れたんだからいいじゃねぇか、と私は刺身を頬張りながらなだめた。

でもね、兄さん。こないだ、捕まっちゃったんですよ。

はい?逮捕?まじか?どうしたの?

木の切り株がまんこに見えるじゃないですか。分かります?

いや、全然分かんない。切り株がまんこ??お前さ、大丈夫か?あ、分かった。
お前、思想が危なくて、逮捕されただろ。

違いますって。
だから、木があって、枝が生えてるところが切られると、こう、こんもり、まんこみたいになるの、、、

ああ!分かった!木があって、枝が生えるようなところか!
俺も、あの造形が面白くて、昔写真撮ってた!
俺は日中だったけど、犬散歩しながら、近くの森林公園みたいなところでね。
木肌も写真撮ると面白いよね。
でも、あれ見て、まんこって!視点がさすがだね。

見えちゃうものはしょうがないです、、、
しかも、俺は、夜中彷徨って撮影してるんで、、、こないだも、夜中、高島平の自宅の近くを一人でカメラ持って歩き回って、でっかいストロボ焚いてそれを撮ってたわけですよ。
で、いい形のがあったので、夢中で写真撮ってたんですが、もうちょっと、こう、何か表現したい、と思いだしたわけです。
そこで、近くのコンビニ駆け込んで、生クリームを買ってきて、その形の良い切り株に、生クリームを垂らして、バシバシ撮ってたわけです。
撮った写真を見て、いや、もうちょっと付け足さないと、雰囲気でないな、とかやってて。
また生クリーム垂らして、あ、垂らしすぎちゃったな、どうしよう、、とか。
で、また何枚か撮って、それを確認してなんて、茂みの中で一人、繰り返していたわけです。そしたら、警官に声かけられて、まあ、何してるんだ、と。
俺が選んだ選りすぐりの形の良い切り株に生クリームかけた時点で、切り株がまんこになってるのは、一目瞭然なわけで、完全に変質者確定なわけです。
しかも、状況証拠が、目の前にあるから逃げられない。
まあ、でも、作品を撮ってるという主張は一貫しましたけど、、、そんなしてるウチに、警官が無線で応援を呼んだんですよ。
一人二人とチャリンコで警官が増えていって、そのうち、パトカーが来て、しばらくしたら護送車まで来て、気づいたら10人くらいの警官に囲まれてるんです。
こりゃ、マジでやばいぞ、と。
そんで、警察署に連行されたわけです。
警察署で、いろいろ聞かれるわけじゃないですか。
盗撮とかを疑われたのかと思ったら、俺、完全にヤク中だと思われてたみたいで。
俺も、スタジオに籠もりっきりで、不眠症になってて、精神的に追い詰められて、夜中家から飛び出してますからね。
フラフラになって、そんな青ざめた顔で写真撮ってたというのもあって、表情とか雰囲気が、ラリってると思われたみたいで、、、すっげぇ寒かったんで、鼻水垂らしながらやってたし、、、どうやら、中毒者は暴れると、ナイフもって斬りかかったりすることも少なくないようで、護送車まで来たらしいです。
こりゃヤバイなと、警官に同情して釈放してもらうしかないと、俺は食えないカメラマンでちょっとでも変わった写真を撮らなきゃいけないと焦って今回の行動に出た、と心情をあおるように説明してたんですが、なかなか分かってもらえず、、、担当警官がたまたま福島の同郷で、なんとか同情してもらい、釈放されたんですよ、、、帰りがけに、もう捕まるなよ、故郷の親に迷惑かけるなよ、写真頑張れよ、と、優しく言って送ってくれました。
俺、なにも悪いことしてないのに。

私は、彼の表現欲求に感銘を覚えずにいられなかった。
まだ、私は彼のモノクロの切り株まんこ写真は拝見していないが、VOGUEのカメラマンから影響を受けたその作品は、間違いなく素晴らしいに違いない。
彼の表現が自由になるに連れ、より過激な似たようなことをやるだろう。
仕方ない。表現者というものは、かくあるべきである。
次、彼が捕まったときは、私が警察署に迎えに行こう。

そんな意気投合した彼と翌週、新宿で飲み歩くことになった。
ありがたいことに、私の写真を撮るというのだ。
だが、彼は変態である。
指示がエキセントリックなのだ。
そこの酔って潰れて寝てる男の顔ギリギリにケツを向けてこっち見て、中指立ててください、とか、あり得ない指示を送ってきた。
ホームレスみたいなその寝ている男にできるだけ近づいたのだが、でっかいストロボをガンガン焚いてくる。
なんとか従ったが、撮った写真を見せられ、顔がこわばりすぎです、と却下された。
あんなのストロボで起きて、後ろからゾンビみたいに、ワッ!!と来られたら、超怖いから。
泣いちゃうから。
兄さんの素が取りたいんです、ってアレはないだろう。
次は、新宿のバーニーズ・ニューヨークのディスプレイの前に連れて行かれ、マネキンに並んで、似たようなポーズと撮ってください、と言われた。
真冬に上着を肩まで脱いで、マネキンのポーズをする、私。
とにかく、ストロボが稲妻のように光りまくるので、しばらくすると、通行人はオーディエンスとなり、私は見世物となった。
スキンヘッドのおっさんが陽気なポージングで写真を撮ってるわけだから、お隣の二丁目界隈の何かだと思ったのかもしれない。
違う、違うんだ。俺はゲイじゃない。これは、そういう、表現なんだ、、、、

シャアアアアア!!!

私は撮影の合間に、ヤツらを睨めつけ、獣のように威圧し追い払った。
そして、その後、ションベン横町に良い場所があると、寒空の下、Tシャツ一枚になって、酔っぱらいの注目を浴びながら撮ったものが一番いい写真になった。

オフショットで、ゴミ箱の中に入ったり、捨ててある一升瓶を振り回したり、酔いに任せて、かなり常軌を逸した行動も撮られていたが、自然じゃない、この作られた感じがダメだ、とダメ出しされた。
よく考えたら、ヤツの切り株まんこの代わりに、被写体が、後ろ見たらちんこみたいな頭の私になってるだけである。
40も過ぎて、私は、一体、こいつと何をしてるのだろうか。
いや、違う。違うぞ。これは表現だ。
クリエイティブなんだ。VOGUEの世界観にインスピレーションされただけなんだ。
次、逮捕されるときは、二人そろって警官に、そう言い訳してるかもしれない。

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Yacchaooze!編集長。ファンタジーを求めて、グルーヴ感ある店を探し当てるのが特技。今宵もソロ活動に勤しむ。五反田がホーム。

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